メルマガ:TOC(制約理論)とトヨタ式経営の本質

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「作業のネットワーク連鎖の改善:スマートファクトリー」

「トヨタ生産方式のIE的考察」(新郷重夫、日刊工業新聞社、1980年)」より

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■工場でも店舗や事務所での所作(作業、仕事などあらゆる行為)は

英語で言えばワークであり

多くの人間がネットワーク(網目構造)で繋がっている。

 

生産現場のネットワーク連鎖の構造を新郷氏は

4つの現象から成り立つと分析する。

 

加工作業、検査作業、運搬作業、停滞作業に分類できる。

 

 

加工とは切る、削る、塗る、組み立てるで、事務作業なら

書く、計算する、まとめる、会話するなど主要な作業である。

 

■検査とは測る、観る、チェックするなど加工の結果を確認する作業である。

運搬とは位置を変えることである。

停滞とは作業対象が何もされないで待つために使われる時間である。

 

そしてそれらのそれぞれに主体作業と付随作業があるとする。

 

加工の付帯作業は機械に対象物を取り付けたり外したりすることである。

検査の付帯作業は測定器の準備や片付けすることである。

運搬の付帯作業は運搬車に載せたり降ろしたりすることである。

停滞の付帯作業は棚に載せたり取り出したりすることである。

 

そしてそれぞれの時間を分析することで

生産時間のどこに無駄がないかを見て改善するのである。

 

 

■ものづくりのマネジメントとは最終的に

時間当たりどれだけ利益を生むかのオペレーションマネジメントである。

 

時間当たりの利益を上げるには時間の無駄をなくすことである。

 

今岡善次郎が提唱しているサプライチェーンマネジメントは

ネットワーク連鎖の作業を2つに分類する。

 

新郷氏の分類に従えば

加工・検査・運搬はプロセスであり

停滞はストックであり、

サプライチェーンはプロセスとストックのネットワーク連鎖と

定義する。

 

 

そしてプロセスとプロセスの間にストックが介在し

プロセスとストックの交互のネットワーク連鎖として

サプライチェーンを定義する。

 

サプライチェーンのシステムのオペレーションの評価関数は

全通過時間、すなわちリードタイム、又は生産時間を如何に短縮して

利益を向上することにある。

 

 

■TOC(制約理論)ではスループットという。

 

今はIOT(モノや設備がインターネットで繋がる)時代において

プロセス時間とストック時間(在庫時間)が

センサーで計測されてコンピュータに送られる。

 

新郷氏の無駄時間を無くし生産改善する手法は

これらのIOTツールによって飛躍的なイノベーションが可能になった。

 

今岡は時間測定と生産量の測定から

利益速度*稼働時間=利益の管理会計を提唱している。

 

需要と供給をマネジメントしながら

利益速度を改善するシステム、

すなわちスマートファクトリーが実現する

 

 

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「3つの出会いがシングル段取りを生んだ」

「トヨタ生産方式のIE的考察」(新郷重夫、日刊工業新聞社、1980年)」より

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■世の中を変えるイノベーションとは

単一の偶然の発明ではない。

 

ものづくり日本が誇るシングル段取りも

新郷氏が出会った3つの成功事例から理論化された。

 

 

段取りとは機械で製品を作る時の準備作業である。

 

この準備作業に時間が取られると

実際の製品を作る時間が減るので

段取り時間の削減は生産能力の向上となる。

 

日本のものづくりがトヨタを中心に大きく発展した時代には

24時間かかっている段取り時間を2分40秒にしたり

8時間を58秒にしたりと顕著な事例もあるが

平均すると1/20になったという。

 

 

■3つの事例の一つ。

 

昭和25年新郷氏は東洋工業、今の社名マツダの工場改善に新郷氏は伺った。

 

大型プレスの能力不足がネックを改善する目的で

現場観察した後プレス作業の稼働分析を1週間させてもらった。

 

最初は現場の熟練作業者は優秀で真面目だから

無駄など無いと抵抗された。

 

実際の時間を分析してみるとプレスの主体作業は僅か3%のみで

段取り替えや準備作業、材料待ち、クレーン待ちなど

機械が稼働していない時間がほとんどだった。

 

2つ目の事例は昭和32年三菱重工業広島造船所のエンジンのベッドを削る

プレーナーがのネック問題を解決した。

 

プレーナーのテーブルを1台から2台にして

1つのテーブルが使用されているとき

もう1つのテーブルで次の作業の準備しておき

機械を止める段取り時間を無くす改善を行った。

 

3つの目事例は昭和45年トヨタの車体工場で1000tプレスの

段取り時間を4時間から1時間半に、

最終的には3分に短縮した。

 

30年の年月を経て「1桁の分、10分未満9分59秒以内で段取りを終える」

「シングル段取り」と命名された。

 

 

■「トヨタ式生産方式」の生みの親、大野耐一氏は

昭和51年トヨタ自工の副社長であった時

日本能率協会発行の「マネジメント誌」に寄稿した。

 

工具交換の時間(段取り時間)を惜しんで作り過ぎたり

夜間や休日を利用するような不経済を無くすことを研究している。

 

段取り時間短縮を日本能率協会の新郷重夫さんが

シングル段取り、つまり10分未満でやると提案している。

 

半日かけて段取りして10分でものを作るのは無駄だかと

半日かけて段取りすればせめて半日は作るという習慣は

売れない製品の在庫を在庫を作るだけである。

 

 

■以上から大野氏と新郷氏の発想法が見て取れる。

 

現場の熟練工に依存するのみではない。

 

自分の目で見て自分の頭でとことん考える。

 

生産という供給のみの効率を追求するのでもない。

 

 

現場観察と時間分析の重要性

需要と供給の全体の最適化を志向する。

 

シングル段取りとは簡潔にして

トヨタ生産方式の進化、日本のものづくりの発展に貢献した

コンセプトと言えます。

 

 

年月をかけた事例の積み重ねから帰納的な発想

コンセプトを作り上げた。

 

出来上がったコンセプトや理論を公式として

応用するのはイノベーションとは言えない。

 

それもいろんな業界の問題との出会いがきっかけとなっている。

 

 

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「内段取りから外段取りに・調整から設定に」

「トヨタ生産方式のIE的考察」(新郷重夫、日刊工業新聞社、1980年)」より

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■同じ機械設備で複数の製品を作るとき

作る製品を変える「段取り」時間が生産能力を落とす。

 

限られた資源である人が複数の仕事をするとき

仕事の切り替え時間が仕事の時間を減らす。

 

シングル段取りとは仕事の成果に影響する「時間」に

焦点を当てたものづくりの思想である。

 

段取り時間短縮には

・外段取りから内段取りに

・調整から設定に

の2つの思想が必要である。

 

段取りには外段取りと内段取りの2種類がある。

 

■外段取りとは機械を止めることなく動かしながら

次の製品(仕事)の準備することであり

内段取りとは機械を止めないとできない準備である。

 

 

機械を止める時間を減らすには内段取り作業を外段取りに

変えることがまず重要である。

 

材料を準備する、道具を揃えるなどは

機械が動いている間にできる。

 

機械ではなく人がキーとなる経営資源の場合は

キーとなる人の段取り時間を助手が肩代わりすれば

キーとなる人の作業時間を確保できる。

 

歯科医師と助手との関係でも同じである。

 

新郷氏の経験によれば外段取りにすることで

段取り時間の40%%は削減できる。

 

 

100分の段取り時間が60分に短縮される。

 

 

■内段取りとは機械を止めて別の仕事の準備することである。

 

例えば型の取りだし取り付け

芯出し(回転中心と重心の一致、バランス取り)や位置決め

試し加工などの調整することである。

 

これまた新郷氏の経験によれば

内段取りの時間の内60%が調整時間だという。

 

 

調整とは位置決め、バランス取り(芯出し)など

試行錯誤の時間である。

 

芯出しは電動機などの回転機械の軸ブレを少なくして

品質を安定させることである。

 

調整時間の短縮で最も良い方法は

「調整しない」ことである。

 

つまり調整しないで一発で「設定する」ことである。

 

 

■ものづくりで稼ぐ工場にするには

設備や人の時間の無駄を分析(見える化)して取り去る対策を

自動化することである。

 

IOTやビッグデータやAIはそれらを実現する道具であるが

道具を使う思想がないと効果はないし

逆効果になる場合がある。

 

 

時間短縮がどうして利益体質になるのか

どの設備やどんな人的資源の時間がコントロールポイントになるのか?

 

IOTやビッグデータやクラウドなどツールベンダーは

経営に役立つデータをリアルタイムの

収集できるとPRしているが

どのようなデータをどう使うかという思想は

トヨタ式経営や新郷氏の思想が参考になる。

 

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「シングル段取りの思想とひとづくり」

「トヨタ生産方式のIE的考察」(新郷重夫、日刊工業新聞社、1980年)」より

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■段取り時間を一桁代の分に短縮するシングル段取りは

テクニックではなく思想である。

 

混然一体となっている段取り替え時間を

外段取りと内段取りに区分するというのは

人間の習性に反する。

 

作業を開始してからでないと問題が発見できないことがある。

 

事前に工具の修理したり型を探したりすることは

修練が必要である。

 

 

■料理を始めると必要な調味料を切らしていて

買いに行くとか

外科医が心臓手術している途中で

必要な器具が見つからないとか。

 

大事な報告書をまとめていると

レポートに入れる写真が足らないと気付き報告書作成が

遅れるとか。

 

段取り時間短縮とは

主要資源の時間のロスをどう削減するかという

問題に帰着します。

 

 

■内段取りを外段取りにするとは一般的な定義をすれば

主資源(設備)の時間ロスを減らすために

副資源(作業者)の時間で補うということになります。

 

機械を止める時間を無くすために

人が必要な準備作業をする。

 

 

主資源が作業者の場合は

人の時間ロスを減らすために機械を使う。

 

日報などで人がデータ入力する時間を減らすために

センサーで自動的にデータを測定しコンピュータにアップロードする。

 

人の時間を分析改善に役立てる。

 

 

■スマートファクトリーというコンセプトが

IOT、AI,ビッグデータなど流行語となっていますが、

ものづくりの思想が大きく役立ちます。

 

シングル段取りにする思想「外段取りを内段取りにする」は

人間とコンピュータの役割分担の設計思想になる。

 

今のところセンサーとネットワークの技術先行ですが

ものづくりもシステムづくりも

技術だけではないひとづくりが欠かせません。

 

ドラッカー思想が

脳神経の轍(わだち)を作ってくれるのです。